情 報
江戸時代後期の人気歌舞伎役者・三代目尾上菊五郎〔天明4年~嘉永2年(1784~1849)〕には、実は大の「盆栽好き」としての横顔がありました。浮世絵版画の役者絵には、鉢植えを座右に飾る三代目の姿がよく見られます。ところが、三代目の盆栽好きは趣味の域には留まらず、ついには向島の寺島(てらじま)村*に、植木屋「松の隠居」を名乗りはじめます。三代目は、なんと植木屋稼業の役者でもあったのです。
本展覧会では、三代目尾上菊五郎の盆栽趣味と植木屋としての横顔に、江戸時代の園芸文化の高まりを背景とした、浮世絵版画をはじめとする資料をふまえて迫っていきます。
この世界への入り口として、まずは「菊屋」という謎の植木屋を描いた浮世絵版画を読み解いていきましょう。描かれた群集の中に、どうやら三代目が紛れ込んでいるかもしれないのです。
*現東京都墨田区。本地名より、明治時代に五代目菊五郎が寺島(てらしま)姓を名乗ることになります。画像出典:
さいたま市大宮盆栽美術館